新たな一歩を踏み出すために―義足の種類と価格相場を解説―

かつては、足を切断すると一生車椅子や松葉杖に頼る生活を送るしかありませんでした。
しかし、現代では技術が進歩し、高品質な義足が開発されています。
そのおかげで、日常生活での歩行や立ち仕事も無理なく行えるようになりました。

そこで、足の切断を決断する前に、ぜひ義足について学ぶことをおすすめします。
どのような種類があるのか、どのくらいの価格で手に入るのかなど、事前に知っておくことで安心感も増すはずです。

特に気になるのが、義足の種類とその価格相場ではないでしょうか。
この記事では、そんな疑問にお答えするため、それぞれについて詳しく解説します。
ぜひ参考にしてください。

目次

仮義足から本義足へ移行するタイミングと義足が手元に届くまでの流れ

義足は、市販品のように購入してすぐ使えるものではありません。
それぞれの使用者に合わせたオーダーメイドで制作されます。

たとえば装具は、注文してから通常1~2週間で届きます。
一方で、義肢(義足)はオーダーメイドであるため、製作に時間がかかり、おおよそ3週間から1ヶ月ほどが必要です。

仮義足から本義足に移行するタイミングには個人差があります。
例えば、仮義足を装着して歩行訓練を行い、その結果を踏まえて医師や理学療法士と話し合いながら進めるケースが一般的です。これにより、使用者に最適なタイミングで本義足へ移行することが可能になります。

また、義肢装具士は、その人の身体能力や年齢、日常生活の活動レベルを考慮してパーツを選定します。
例えば、年齢が高めの方には安定性を重視したパーツが選ばれることが多く、一方で、スポーツを楽しみたい若年層には、より動きやすい設計が考慮されます。

以上のような流れによって、使用者に最も適した義足が完成し、快適な生活をサポートすることができます。

義足の種類と価格の目安とは?

いよいよスタート!義足の種類と価格について詳しく見ていきましょう!

①股義足(こぎそく)

股義足は、片側骨盤切断や股関節切断を受けた方が使用する義足で、義足の中で特に高い技術と調整が求められる義足です。

この義足は主に以下のパーツから構成されています

ソケット:切断した足の残存部分を収納する部分で、装着感を左右する重要なパーツです。

股継手:股関節の役割を果たし、歩行時の可動性をサポートします。

膝継手:膝の動きを代替し、歩く際の自然な動作を実現します。

足継手:足首の機能を補い、全体的なバランスを支えます。

足部:地面に接触する部分で、歩行の安定感を提供します。

股関節部分からの切断という特殊な状態に対応するため、歩行が難しいと感じる方も多いです。
そのため、身体のバランスを保ちながら慣れるまでに時間がかかります。

また、「カナダ式」と呼ばれる方法が一般的で、骨盤全体をソケットで固定する仕様となっています。
これは装着時の安定性を高めるための工夫です。

価格はおおよそ50万円から150万円程度で、使用する素材や機能によって変動します。
例えば、歩行訓練を進めたい方には高性能なパーツが選ばれることもあります。

②大腿義足(だいたいぎそく)

大腿義足は、大腿部を切断した際に使用される義足で、股関節が残っている場合に適しています。
歩行のしやすさを重視しながら、個人の状態に合わせて設計されます。

この義足は、股関節が残っているため股継手(股関節を代替するパーツ)は必要ありません。
そのため、動作が比較的スムーズに行える特徴があります。
例えば、階段の昇り降りや平地を歩くときでも股義足に比べ自然な動作に近い形で歩行できることが可能です。

大腿義足には以下のような装着方式が採用されています

吸着式:ソケット内部で真空を作り、密着感を高めて義足を固定する方式。フィット感が高いのが特徴です。

ライナー式:柔らかいシリコンなどのライナーを装着してから義足を固定する方法。
肌に優しいため、長時間の装着が必要な方に向いています。

差込式:簡易的に義足を差し込む方式で、装着のしやすさが利点です。

価格はおおよそ30万円から100万円程度で、選ぶ方式や使用する素材、追加機能によって異なります。

例えば、吸着式はフィット感に優れていますが、比較的高価になることがあります。

一方で、差込式は装着が簡単でコストを抑えることができます。

③下腿義足(かたいぎそく)

下腿義足は、膝から下を切断した方が使用する義足で、歩行能力を非常に高めることができるタイプの義足です。
股関節や膝関節が残っているため、股継手や膝継手は必要なく、主に以下のパーツから成り立っています。

下腿義足は、股義足や大腿義足に比べて歩行がしやすく、訓練を重ねれば健常者とほぼ変わらないスピードで歩くことが可能です。
例えば、日常的に長距離を歩く方やランニングを楽しみたい方でも、適切な義足を選べば快適に活動できます。

下腿義足には以下の装着方式があり、それぞれに特徴があります

TSB式: 脚全体に均等に負荷をかける設計で、長時間使用しても快適です。アクティブに動き回る方に向いています。

PTB式 :膝下の一部に負荷を集中させる方式で、装着の安定性を高めます。
特に軽作業や短い距離の移動が多い方向けです。

KBM式: 膝周辺をしっかりサポートする設計で、階段の昇り降りなどでの安定感があります。

PTS式:膝上までカバーする構造で、さらに安定性を重視したい方向けの方式です。

差込式: 簡単に装着できる方式で、高齢者や装着に時間をかけたくない方に適しています。

価格相場はおおよそ20万円から50万円で、使用する素材や方式によって変動します。

例えば、アクティブな生活を送りたい方には、軽量で丈夫な素材を使用したTSB式が選ばれることが多く、費用がやや高めになる場合があります。

一方で、費用を抑えたい場合や短時間の使用を目的とする場合には、差込式などのシンプルな設計が適しています。

こんな違いも!構造で選べる義足の魅力とは?

義足には、切断部位に応じた種類だけでなく、構造の違いによる分類も存在します。

それぞれの特徴を理解することで、自分に合った義足選びが可能となります。

  1. 骨格構造義足
    骨格構造義足は、継手やチューブといったパーツで構成され、その外観をウレタンフォーム材で造形するタイプの義足です。この構造により以下のような特徴があります

柔軟性と修理のしやすさ:骨格部分が露出しているため、部品の交換や調整が簡単です。
例えば、足部や継手の一部が傷んだ場合、個別の部品を交換することで義足全体を長く使い続けることができます。

軽量で実用的:日常的な移動や活動を重視する方に適しており、装着時の負担が少ないのが特徴です。
例えば、アクティブな生活を送りたい方や、成長期の子どもには、このタイプがよく採用されます。
成長に応じて部分的な調整や交換が容易な点がメリットです。

  1. 殻構造義足
    殻構造義足は、実際の身体のような殻状の構造で作られています。
    繊維強化プラスチックが義足部分を支えるため、外観がスムーズで強固な設計です。

    この構造の特徴は以下の通りです

見た目の自然さ:殻構造で覆われているため、見た目がより人間の足に近く、服を着た際に違和感が少ないです。

高い強度:頑丈な作りで、スポーツなどの激しい動きにも対応可能です。

例えば、外見を重視したい方や、スポーツを楽しむ方に適しています。

また、特殊なデザインで安定性を向上させた仕様も選ぶことができます。

義足は高額でも大丈夫!支払負担が軽減される仕組みとは?

義足は高額な商品でありながら、多くの方が選択する理由があります。
それは、義足を使用することで日常生活の幅が広がり、生活の質が大きく向上すること、さらに費用面での負担が大幅に軽減される仕組みが整っているからです。

具体例1: 病気による切断の場合
病気が原因で切断し義足を購入する際、費用は個人の収入に応じて決まります。
しかし、そのほとんどを国や県、市が負担するため、実際に自己負担する金額は数万円程度で済むケースが一般的です。例えば、糖尿病や血管疾患により足を切断した場合でも、経済的な心配が少なく、適切な義足を手に入れることができます。

具体例2: 労災の場合
職場での事故により切断が必要になった場合、費用はすべて労災保険が負担します。そのため、自己負担額はゼロです。例えば、建設現場での作業中に事故で足を失った方でも、労災保険を利用することで最新技術を用いた義足を選ぶことが可能になります。

具体例3: 事故の場合
交通事故などによる切断では、保険会社が費用を負担するため、こちらも基本的に自己負担額はゼロとなります。そのため、多くの方が高額な電子制御義足を選ぶ傾向にあります。例えば、事故後に義足を必要とした方が、電子制御機能付きの義足を選び、自分の意思で動きをコントロールする便利さを手に入れるケースがあります。

このように、義足を購入する際には高額な費用がかかるものの、さまざまな助成や保険制度が利用できるため、実際の支払額は抑えられる仕組みがあります。これにより、より多くの方が自身に合った義足を選択し、快適な生活を送ることが可能となっています

まとめ

「義足の種類と価格相場」についてご説明しました。
義足には股義足、大腿義足、下腿義足など様々な種類があり、それぞれの特徴や用途に応じて価格も大きく異なります。ただし、国や県、市、保険会社、労災保険といった制度が整っているおかげで、自己負担額はゼロ~数万円程度と、経済的な負担を大きく軽減することができます。
このような支援制度を活用しながら、自分に最適な義足を選び、快適な日常生活を送る一助としていただければ幸いです。

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