
「義足は隠すもの」から「誇れるもの」へ
義足をつけている人を見かけたとき、どんな印象を持ちますか?
「不便そう」「かわいそう」「特別な人」——そんな言葉が、まだ社会の中に残っているのが現実です。
でも最近、そんな“当たり前”が少しずつ変わり始めています。
義足を「隠すもの」ではなく、「誇れるもの」として見せる人たちが、ファッションの世界に登場しているのです。
京都芸術大学の学生たちが手がけたファッションブランド制作プロジェクトでは、義足ユーザーがモデルとして参加。
この取り組みは、福祉とファッションが交差する新しい社会のあり方を提案するものでした。

「服の力で、自分をもっと好きになれる」——学生の実体験から始まった挑戦
このプロジェクトのきっかけは、ある学生の実体験。
彼は補聴器を使っていた過去があり、高校時代に「それ、かっこいいね」と言われた一言で、コンプレックスが自信に変わったそうです。
その経験から、「装具を使っている人が、服をきっかけに自分を好きになれる社会を作りたい」と願うようになった。
その想いが、義足という“選択”と出会い、ひとつのブランドとして形になりました。
義足を見せる。
それは、勇気がいること。
でも、見せた瞬間に「自分が変わった」と感じる人がいる。
それが、このプロジェクトの本質です。

義足モデルとして歩くことが、社会へのメッセージになる
義足を選ぶということは、ただ歩くための選択ではありません。
それは、人生の方向性を決める大きな分岐点でもあります。
義足を「誇り」として見せることで、自分自身を肯定できるようになった人たちがいます。
そして今、同じように悩んでいる人たちに、「義足はあなたの個性だ」と伝えたいという声が広がっています。
ファッションは、ただの服ではない。
それは、自分を表現する手段であり、社会に問いかけるメッセージでもある。
だからこそ、義足モデルとして歩くことには意味があるのです。

「義足の未来を変える会」が目指すもの
この挑戦は、市民団体「義足の未来を変える会」の啓発活動の一環でもあります。
義足ユーザーが直面する課題は、まだまだ多くあります。
- 制度の不備や情報の少なさ
- 義肢装具士の人材不足
- 若い世代への理解不足
団体では、SNSや講演、署名活動を通じて、こうした問題を社会に伝えています。
そして、厚生労働省との交渉も行いながら、少しずつ制度を動かそうとしています。
目指すのは、「義足ユーザーが特別扱いされる存在」ではなく、「社会に自然に馴染む存在」として生きられる未来です。
ファッションが変える、福祉の未来
世界では、義足を使ったモデルがファッションショーに登場することも増えてきました。
「プーマ」や「アレキサンダー・マックイーン」などのブランドが、義足をデザインの一部として取り入れたショーを開催しています。
日本でも、こうした取り組みが少しずつ広がり始めています。
義足を「隠すもの」から「見せるもの」へ。
そして「誇れるもの」へ。
福祉×ファッションという視点は、まだ新しい挑戦かもしれません。
でも、装具を“個性”として捉える文化が広がることで、社会全体の価値観が変わっていくはずです。
義足は、もう「不便な補助具」ではない。
それは、自分らしさを表現するアイテムであり、未来を変える力を持っています。
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